top of page
罪悪の町
「蝉って、土の中で何年も暮らして、地上に出たら七日で死んじゃうんだよね」 こちらに背を向けて、砂をさくさくと踏みながら、彼女は言った。 「それに比べたら、人間は地上でいくらでも過ごせるんだから。朝顔も育てられるし、お祭りにも行ける。こうやって、海を見に来ることだってできる。贅沢な話だと思わない?」 足を止め、彼女は振り返った。白いワンピースがひらりと翻る。雲間から差した光が黒髪を照らした。 「なんで立ち止まってるの。こっち来なよ」 破顔する彼女に対し、私はぎこちない笑みを返した。緩慢に歩みを進め、彼女に近づく。つい先ほどまで、心地良い海風に重みを奪われていた足の動きは、今はいつになく鈍かった。一歩ごと、深い足跡が砂浜に刻まれた。 仕方のないことである。私は今、人殺しと対面しているのだから。 この夏、短いながらも休暇を得た私は、久方ぶりに里帰りをしていた。太平洋に近い田舎町。近頃はあまり触っていなかったハンドルを握り、数時間かけて実家に帰省した。以前より皺が増えた気がしないでもない両親に土産物を渡し、何杯か酒を飲み、翌朝早くに叩き起こされ
meishomitei
5月23日読了時間: 11分


山里より
『山里より』(2025NF企画本) 唐草伊於 お盆から九月の連休にかけて忙しい時期を越えて、昼間でもちょっと一息つけるぐらいになってきた。山あいで標高が高いということもあり、早くも朝晩の冷え込みが始まっている。からっと晴れると日中は過ごしやすい、そんな季節だ。 今日のような普通の土日の昼過ぎは、近場から来た中高年の夫婦やツアー客が多い。 昼営業を始めて早々、珍しく若い顔ぶれの来店があった。座敷の卓袱台は六人には小さいので、隣り合わせのふたつに分けて案内する。男女混ざったグループで、入った順に席について和やかに話していた。 水を注いでいる間に、奥から叔母が出てきた。メニューを出すついでにお客さんに話しかけるのはいつもの光景だ。 叔母の明るい声が響く。おしゃべり好きなのはいいが、同年代ならともかく親子ほども年の離れた人たちには引かれないだろうか。そう思って気にしていたが、お客さんたちは終始にこやかだ。 「そうなの! 遠いところからせっかく来てくださったから、おいしいもの食べてってね」 うちはこれが人気よ、と看板メニューを宣伝するのも忘
meishomitei
5月7日読了時間: 5分


meishomitei
4月17日読了時間: 0分
恋はROM専で
『恋は ROM 専で』_ 春花火 (2024 NF) もうすぐ十八時四十五分になる。 「そろそろだな」 僕はそう呟いて、教室の窓を開けた。七月だから、十九時近いといってもまだ明るく、人もはっきり見える。開けた窓から覗くと、ちょうど部活を終えた生徒たちが、最終下校時刻に急かさ...
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 6分


無題
『無題』_二酉
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 1分


信仰
『信仰』_ 昧爽 (2024 NF)
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 1分


手紙
『手紙』_ さい (2024 NF)
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 1分
私へ
『私へ』_ double quarter (2024 NF) 「大人になったわたしへ 一昨日わたしのおじいちゃんがなくなりました。わたしは今とても悲しくてこわいです。悲しいのは大好きなおじいちゃんがいなくなってしまったからで、こわいのは同じようにみんながいなくなるかもしれな...
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 32分


eruption
『eruption』_ Rye (2024 NF )
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 1分
Called
『Called』_與円 (2024 NF) 夜の十二時頃、夜勤のバイトから帰っている時、高校の頃の友人から電話がかかってきた。電車の中だからなぁ、などと一瞬考えたが、他に乗客もいないので通話を繋げることにした。 「今日、街の方で飲んでて、酔っ払っちゃって帰る電車間違えちゃっ...
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 4分
アンセム・オブ・アーセナル
『アンセム・オブ・アーセナル』_日比谷 (2024 NF) アンセム・オブ・アーセナル 日比谷 [Side: Ground –1] 「リクトより司令部に報告。第二十五番アンセム・アンカーの点検及び損傷部の交換が終了。再起動シークエンスを開始します」...
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 38分
二岐で
『二岐で』_真夜 (2024 NF) 「次は俺の番か」 Yが口を開く。蠟燭の光に照らされ、暗闇に浮かぶ粗暴そうな顔。わずかに見える金髪と荒っぽい口調の男。 「俺が変な体験をしたのはあれの一度きりだ。もう本当は思い出したくもねえんだけど」 他に話すことなんてねえし……。...
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 16分
HIRAESH
『 HIRAESH』_氷崎光 (2024 NF) 前編. SEPIA 時折、何で忘れていたんだろうというような重要な記憶を、不意に思い出すことがある。 例えば、学生の頃に親友たちと交わした、絶対に忘れない、と誓った約束。〝思い出した〟時点で詰みだ。あの瞬間の絶望感たるや。...
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 29分
三崎理乃の青春日記
『三崎理乃の青春日記』_佐渡いとら (2024/09) じりりりりり、と鳴り響く目覚ましの音で、三崎理乃は目を覚ました。 いつもと変わらない朝。 理乃は眠たそうに目を擦る。生地のなめらかそうな黒色のパジャマはところどころはだけていて、いつもは自慢の長い髪も今ばかりはボサボサ...
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 32分
傘を失くした
『傘を失くした』_暮四 (2024/07) 20歳 6月 最愛の女を抱いた日の夜、僕は傘を失くしたことに気がついた。そのことは少なからず僕を動揺させた。その夜は酷く雨が降っていて、僕はそれに対処する手立てをひとつも持っていなかったからだ。僕の手もとには何もなかった。タクシー...
meishomitei
2025年4月15日読了時間: 36分
bottom of page