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思い出の味 週末編

 

警告 現状の食生活に不満な人が読むとつらくなります。

今回は、週末に食べた思い出の味について述べる。


・焼きプリン

 母は忙しいながらも、週末にはしばしばお菓子を作ってくれた。特においしかったのが焼きプリンである。表面はオーブンでこんがりと焼かれ、中は深いこくとほどよい甘みがあった。下のカラメルのほろ苦さが甘さを引き立てた。日曜の夕食はこれを食べて、「明日からがんばろう」と言い合ったものだった。


・ケーキ

 父は休日の夜も仕事をしていて、夕食の時間には帰れなかった。だが、ときたま、何の記念日でもないのに、ケーキを買って早く帰ってきた。「何で今日はこんなに早いの」と言いながら、皆で夕食後にケーキを食べた。ケーキはおいしかったし、家族そろっての夕食が何よりうれしかった。


・スープ

 母は週末にスープを作って、毎食スープを出してくれた。日曜の夕食はできたてのスープを飲んでほっとした。種類もたくさんあり、味噌汁だけでも、石狩風、なめこ、さつま汁などがあった。冬場のトマトスープは特においしかった。トウモロコシ、玉ねぎ、ブロッコリー、しめじ、豚肉などの具材がたくさん入っていて、それらが深いコクを出していた。


・パンプティング

 母は、日曜の朝にフレンチトーストを作ると、おやつにこれを出してくれた。ちぎったパンを、卵・牛乳・砂糖を混ぜた液(フレンチトーストの液)、レーズンなどと混ぜてしばらくボウルに置き、レンジで温めたものである。口に入れると、とろけて甘さが口に広がった。フレンチトーストのカリカリとは違った食感がたまらなかった。


・パウンドケーキ

 中高では土曜授業があった。その帰りに、祖母はよく私を呼び止め、お茶を出してくれた。お茶うけには、季節の果物や作り立てのおかずなどを出してくれたが、中でもこれが一番おいしかった。炊飯器で作ったという。中でも黒豆味が一番おいしかった。お菓子を食べながら祖父母と話し、満ち足りた気分で家に帰ったものだった。


・ゆかりチャーハン

 土曜の昼食によく作ってくれた。冷ご飯をニンニク、ごま油と炒め、ゆかりを混ぜたものである。台所から私の部屋に香りが届くと、食べたくてうずうずした。ゆかりの香りをかぎながら、ほかほかをおなかいっぱい食べた。普通のチャーハンもおいしかったが、ゆかりチャーハンが一番好きだった。


・アイス

 夏の週末は、よく兄と母と三人でアイスクリームを食べた。ある程度食べると、私と兄は「こっちも食べへん?」と言って、お互いのアイスを交換して少し食べ、また返していた。これは、一度で二種類の味を食べるために二人で考案した方法である。今は兄と離れて暮らしているが、ときたま思い出す。


・新米

 去年は田植えにもお盆にも実家に帰れなかった。去年の秋、実家から新米を送ってきてくれた。さっそく夕食に食べた。新米と古米の味の違いをはっきりとは知らないが、炊き立てのご飯だけでその日の夕食は満足した。祖父に電話しておいしかったと伝えた後、自分は一人ではないのだとしみじみ思った。


・赤飯

 院試合格発表の数日後、両親が持ってきてくれた。祖母が合格を聞いて作ってくれたという。両親が帰った後、下宿で一人それを食べていた。ほどよいかたさで、すりごまのいい香りがした。食べ終わると、むしょうに実家に帰りたくなった。


以上が私の思い出に残る週末の味である。おいしいものを出してくれた家族に感謝するばかりである。


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