七七七五文字からなる詩をどどいつという。今回は最後の五文字を「ほど遠い」にしたどどいつを作ってみた。リズムをつけて読み上げると面白いはずである。
二〇一九年は第一次世界大戦の講和条約であるベルサイユ条約、朝鮮の三一独立運動、中国の五四運動から百年目であることはあまり注目されていない。そこで一つ。
新世喜び/往時思わず/国際人に/ほど遠い
五月に改元があって、世間では新しい時代が来たと言って騒いでいる。だが、年号が変わっても問題はたくさんある。そこで一つ。
年号変わり/分断同じ/新時代には/ほど遠い
タピオカ店が近所にできた。写真をSNSに投稿するため多くの人が訪れているが、飲んだコップをポイ捨てしていく人がいる。そこで一つ。
タピオカ飲んだら/容器は放置/インスタ映えに/ほど遠い
夏のコンビニにおでんの旗が立っていた。エアコンで体が冷えたらおでんがおいしいらしい。そこで一つ。
冷風かけて/あつあつおでん/夏らしさには/ほど遠い
最近はスマートフォンが普及して、自分の見たい動画やテレビを各人が各人の端末で見られるようになったが、どこかさみしい。そこで一つ。
居間に集まり/スマホで無言/一家団らん/ほど遠い
最近はスマートフォンで簡単に写真が撮れるので、旅先の景色をカメラで撮って後で見るだけの人も多い。そこで一つ。
カメラ向けても/景色は見ない/脳に残るは/ほど遠い
実家から新米が送られてきた。実家の米や野菜を一人料理し、一人食べていると、実家での暮らしが思い出されるとともに、何もなしとげずにいる自分がむなしくなる。そこで一つ。
我が家を思い/一人夕飯/よき子よき孫/ほど遠い
この原稿を書きながら思った。このようなどどいつは本来の人情や恋模様を歌ったどどいつとはかけ離れている。そこで一つ。
うっぷん並べ/字数を合わす/どどいつなどに/ほど遠い
次に、でたらめな漢詩を作ってみた。一応日本語読みで脚韻を踏んではいるが、何もルールを守っていない。
入大学未成 大学に入るも未だ成らず
不能隠無能 能なきを隠す能わず
出奇行不忠 出でて奇行して忠ならず
入怠惰不孝 入りて怠惰なれば孝ならず
凡人怠為足 凡人にして怠りて足れりと為す
小人恃己厚 小人にして己を恃むこと厚し
今累卵将崩 今累卵将に崩れんとす
何得帰正道 何ぞ正道に帰するを得ん
現代語訳すると、こうである。
大学に入っても未だに功績を立てていない
自分に能力がないのは隠せないものだ
街に出れば奇行ばかりで社会にまごころをつくせないし
家に帰っても怠けていて孝行をつくせていない
才能に乏しいが鍛錬を怠って今のままで足りていると考えているし
小人で自分を過信する
私は積んだ卵のように危ない状態で、今にもバランスを崩しそうだ
どうして正しい道に帰ることができるというのか
最後に替え歌ならぬ替え漢詩を作ってみた。まず本歌は孟浩然の「春暁」である。
春眠不覚暁 春眠暁を覚えず
処々聞啼鳥 処々啼鳥を聞く
夜来風雨声 夜来風雨の声
花落知多少 花落つること知る多少ぞ
訳すとこうなる。
春は夜が明けてもわからない
(寝ていると)所々で鳥が鳴くのが聞こえる
夜に風と雨の音がした
花は(風で)どれくらい落ちたのか
これをパロディにして、「学業」という詩を作ってみた。もちろん、ルールを無視したでたらめ漢詩である。
春眠不覚暁 春眠暁を覚えず
至夏忘授業 夏に至るも授業を忘る
前夜絶望声 前夜絶望の声
惟請願訴情 惟だ請願して情に訴うるのみ
現代語訳、あるいは大学生語訳するとこうなる。
新学期は朝起きられない
夏になって、ついに履修登録をしたことすら忘れる
(授業にほとんど出ないまま)テスト前夜になり絶望して叫ぶ
担当教授にお願いして情に訴えて単位をもらうしかない
以上で今年のぽえちゅは終了である。つまらない、ルールを無視した詩で、お怒りの読者も多いと思うが、お許しください。
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