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葱の歌


漢詩のルールを無視したでたらめな漢詩を作った。元ネタとなった漢詩(原文はmanapediaを参照)の後に、自作、その書き下しと現代語訳を付す。


〇杜甫 「春望」

国破山河在 国破れて山河在り 都は破壊されて山河だけがある

城春草木深 城春にして草木深し 都は春で草木が深く茂っている

感時花濺涙 時に感じては花にも涙を濺ぎ 時勢を思って花に泣き

恨別鳥驚心 別れを恨んでは鳥にも心を驚かす 家族との別れを恨んでは鳥にもびくっとする

烽火連三月 烽火三月に連なり のろしは何か月も上がり続け

家書抵当万金 家書万金に抵たる 家族の手紙も(届かず)貴重である

白頭掻更短 白頭掻けば更に短く 白髪頭をかきむしると更に薄くなり

渾欲不勝簪 渾べて簪に勝へざらんと欲す 冠をとめるピンもまったくさせないほどだ


葱 「去年の春望」

国乱中止多 国乱れて中止多し 日本中が混乱して中止ばかり

城春覆口沈 城春にして口を覆いて沈む 春の町では皆マスクして沈む

感時鼻注意 時に感じては鼻にも意を注ぎ 時勢を思って鼻水にも注意

恐病咳驚心 病を恐れては咳にも心を驚かす 感染を恐れて咳にびくっ

自粛連三月 自粛三月に連なり 自粛要請は何か月も続き

厠紙抵万金 家書万金に抵たる トイレットペーパーは(転売で)高騰

求終息更遠 終息を求むれば更に遠く 終息を願ってもほど遠く

疲欲不勝忍 疲れて忍ぶに勝へざらんと欲す 疲れて堪え切れなりそう


〇孟浩然「春暁」

春眠不覚暁 春眠暁を覚えず 春の眠りは夜明けもわからない

処処聞啼鳥 処処啼鳥を聞く あちこちで鳥が鳴いているのが聞こえる

夜来風雨声 夜来風雨の声 昨夜風雨の音がした

花落知多少 花落つること知る多少ぞ 花はどれくらい落ちたか


葱「卒論末期」

冬眠不待暁 冬眠暁を待たず 冬は(卒論が心配で)おちおち眠れない

処処生異常 処処異常を生ず 体のあちこちに異常が出てきた 

夜間呻吟声 夜間呻吟の声 夜も(書けずに)うめく

進捗憂極少 進捗きわめて少なきを憂う ほとんど進まないのを憂う










〇百人一首を替え歌した。番号は百人一首中の番号である。原文は『百人一首』(島津忠夫訳注、角川書店、一九九九年)を参照した。


・一回生

二 春すぎて 夏来にけらし 白妙の ころもほすてふ あまのかぐ山

→春すぎて 何やらむなし 大学で 一体我は 何を学ばん


九 花のいろは うつりにけりな いたずらに わが身よにふる ながめせしまに

→今年さえ 終わりにけりな 恐ろしき 自由の学風に 涙せしまに


十四 みちのくの しのぶもぢすり 誰ゆえに 乱れそめにし われならなくに

→辛くても せんかたなしや 大学を 目指しそめにし 我ならなくに


二十四 このたびは 幣もとりあえず 手向山(筆者注 たむけやま) 紅葉の錦 神のまにまに

→この旅は 時間も気にせず 楽しもう 受験生では ない夏休み

→高校時代の友と夏休みに名古屋に遊びに行ったときの心情。


二十九 心あてに 折らばや折らん 初霜の 置きまどわせる 白菊の花

→心あてに 書かばや書かん 中語試験 全く解けぬ 中国語訳

→前期に受けた中国語の試験では、怠けてばかりでろくに解けなかった。

三十四 誰をかも 知る人にせん 高砂の 松も昔の 友ならなくに

→誰もかも 知る人ならず 教室の 誰も故郷の 友ならなくに


三十八 忘らるる 身をば思わず 誓いてし 人の命の 惜しくもあるかな

→放置さる 身をば自分で 守れとて 自由の学風 憎きもあるかな


三十九 浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき

→浅知恵と 思いながらも 言ってみて アドバイスもらう わが師との会話

→夏休みの研究室訪問で、東洋史研究室で研究したいことを言ったら、先生がいろいろな本を教えてくださった。


四十 忍ぶれど 色にいでにけり わが恋は 物や思と 人の問うまで

→忍ぶれど 色に出でけり 我が落胆 見学者たちが 我を見るらん

→大学の短所が見えて辛かったころの心情。


四十一 恋すちょう わが名はまだき 立ちにけり 人しれずこそ 思いそめしか 

→のど不調 森進一の ものまねを 人知れずこそ しすぎたせいか 

 

四十三 逢い見ての のちの心に くらぶれば 昔は物を 思わざりけり

→入っての のちの心に 浮かぶのは 昔は先を 思わざりけり


三十 有明の つれなく見えし 別れより あかつきばかり 憂きものはなし

→一回生 組織の駒に せられんと 知れる時ほど 憂きものはなし


五十 君がため 惜しからざりし 命さえ 長くもがなと 思いけるかな

→受かるため 惜しからざりし 時間さえ 無駄に使いし 日曜日かな


・四回生

一 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露に濡れつつ

→秋の田を 刈りに帰らず 米を食い わが衣手は 露に濡れつつ


三 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝ん

→あしびきの 山より高き わが親の 恩にこたえむ いかならんとも


七 天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に いでし月かも

→五限後に ふりさけみれば 名張なる 我が家の上に いでし月かも


十三 つくばねの 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる

→佃煮と 手紙に溢るる 祖母の愛 疲れ積もれど 吹き飛びにけり

→一一月ごろ、両親が祖母の佃煮を持ってきてくれた。後日、祖母の手紙が届いた。今もくじけそうなときはそれを読んで立ち直っている。


三十三 ひさかたの 光のどけき 春の日に しず心なく 花の散るらん

→ひさびさに 卒論のない 春の日に しず心なく 課題求めん


四十四 逢うことの たえてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし

→対面の たえてしなくば なかなかに 大学生は 憂きものならまし(筆者注 たえて=まったく~ない、ならまし=~だろうに)


四十六 由良のとを わたる船人 かじをたえ ゆくえも知らぬ 恋の道かな

→由良のとを 渡る船人 の比ではない 行方も知らぬ 我の行く先


四十八 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思うころかな 

→行き詰まり どうにもならぬ 己の身 くだけて何か やれる頃かな

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